甘いCandy ひとつだけの…溶かしてよ 僕の 夢の中で愛したい
最遊記 Candy
がっ…ぼりっ…
背中を伝わる振動と、耳から聞こえるくぐもった音に八戒は苦笑した。
「…ねぇ、」
「ん?」
背中に凭れていたが呼びかけに反応して上体を起こした。
自分が呼びかけた結果とはいえ、感じていた温もりが失われたことが惜しい。
「のど飴って…舐めてないと効き目薄いんじゃないでしょうか?」
「あ…噛んじゃった」
「無自覚だったんですね」
今更気付いたような呟きに、ほほえましさを感じた。
「…うん…まぁいいか…このまま舐め……っ…」
「?」
不自然に途切れた言葉に、八戒はの方へ向き直った。
「…らいりょうふ、ひらひっられららけ…」
どうやら『大丈夫、舌ひっかけただけ』と言っているらしい。
「ちょっと見せて…ああ、血が出てますね。ちょっと待っていてください、ね…」
が診せる為に出していた舌を八戒はそっと唇で挟み込み、小さな傷に自分の舌を這わせた。
頬を包み込むように添えていた両手は頭の後ろに廻しての退路を塞ぐ。
飴の甘さに混ざる僅かな鉄の味、それがの味だけになるまで八戒は追撃の手を緩めなかった。
「……んっ……っ!はっ…はっかい、ななな…」
漸く解放されたものの『何をするの!?』とすら言えずにどもるの意を汲んで、八戒が答える。
「治療ですよ。ほら、治ったでしょう?」
確かに痛みは消えた。例え痛みが残っていても痺れて判らなくなっているだろうが。
「気孔で治すほどの怪我でもないし、きっ…キスする必要ないじゃないの」
「役得くらいあってもいいじゃないですか。他の人にはしませんよ」
「…………したら許さないから、ね」
「しませんってば。貴女だけです、」
滅多にないからの束縛の言葉。
そんな言葉すら嬉しくて、八戒は深い笑みと両腕でを包み込んだ。
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