Log Horizon
ログ・ホライズン act1. 03
同刻〈記録の地平線〉ギルドハウスのダイニング。
「あの、さんってどんな方なんですか?」
にゃん太が作り置きしたモンブランと〈新妻のエプロン〉を装備し淹れた暖かい紅茶をテーブルに並べながらミノリがその場に残る年長組に問うた。
「殿はわたしと同じ〈暗殺者〉で…"そだて屋"だ」
「"そだて屋"さん、ですか?」
アカツキの端的すぎる回答に、なおさら首を捻るミノリ。
「ちみっこ、それじゃ何もわからん祭り」
「ちみっこ言うな、バカ継。
むぅ…殿は〈そだて屋〉というソロギルドでエルダーテイル時代に新人やソロプレイヤー向けのサポートをしてた人だ」
直継のツッコミにお約束の返しを入れつつも、アカツキ自身も言葉が足りない自覚はあったらしく、暫く考えてから言い直した。
「ただ、よくある情報系やイベントクリアを目的としたサポートじゃなく、プレイヤースキルの育成を目的としたサポート、
…そうだなあ、ミノリ達がやった『ラグランダの社』んときみたいに経験から学んで自分達で考えて…って感じだな」
どこか懐かしそうに直継が続ける。
「何故そのような手間のかかる事をするのかと聞いたことがあるが『MMOなんて新規参入が無いと過疎ってサービス終了になるモノだから』と返された。
そういう人物だ。だから殿はギルド名そのままの"そだて屋"と呼ばれている」
「レイダーには〈薬叉女の面〉と〈深紅の舞装束〉って装備から付いた"紅夜叉"ってふたつ名の方が有名だけどな」
交互に答える年長組に、好奇心に満ちた眼差しで問いを重ねるのは五十鈴。
「それでそれで、そのさんとうちのギルマスってどういう関係なんですかっ!?」
「五十鈴姉、ちょっとワクワクしすぎだよ」
朝起きたらシロエの私室から出てくる女性と鉢合わせしました、という状況では止むを得ない反応ではある。
五十鈴にツッコんだトウヤはそれとなく姉の反応を伺っている。ミノリも関心と緊張を隠せない様だ。
「わたしは…知らない。主君と殿に面識があったことも知らなかった」
アカツキは困ったように直継に視線を向けた。
「さんは〈放蕩者の茶会〉の助っ人っていうか、ときどき一緒に行動してて、俺やシロとはそこからの付き合いだな。
にゃん太班長はもっと前からの付き合いだって聞いてる。
シロとさんは…苦労仲間つーか、同じ相手に振り回されていた同士っつーか。
艶っぽい関係じゃないのは確実祭り。シロもそうだけどさん側で絶対あり得ない。
資料作成で完徹ってのも本当だろーな…シロだし」
直継の回答に、あからさまにガッカリした五十鈴と、ほっとした風情のアカツキとミノリ。そんな様子に苦笑を浮かべる少年ふたり。
「フレンドリストの反応が無かったから、てっきりログインしてなかったんだと思ってたんだが、まさか北米サーバにいたとはなあ…」
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